わたし達の心の中で蘇った日。

先日、55年続いていた百貨店が閉店しました。


この百貨店は、夫の両親の御用達でした。特に、義母にとっては、好みのセットアップが揃っているブランドのお店もはいっていたり、ゆったりショッピングができる環境が、とても気に入っていたのです。

わたしが同伴する際は、洋服より、老舗の和菓子屋さんのクリームあんみつが楽しみでした。子どもが生まれてからも、五月人形やランドセル、子どものゲーム機器その他、必ずこの百貨店で買ってもらってもいたのです。

その義母が亡くなって13年。

朝、テレビで百貨店閉店のニュースを見ながら『あぁ、いよいよ閉店なんだなぁ〜』と。

あの時の光景、あの時の空気、あの時の匂い………義母との思い出風景に思いを馳せながら、一つ一つの出来事に愛の分かち合いがあったというこを愛おしく思いを巡らせ見ていたのでした。

そんな朝を過ごしたわたしは、その後は日常のあれやこれやで忘れてしまい….それは午後3時ごろ?だったでしょうか……ふと『やっぱり、行こう』とわたしの心の奥に僅かなスパークと共に思いが浮上しました。思いとは、百貨店の閉店を見届けよう〜というもの。 

朝のテレビを見ていてずーっと悩んでいたわけではありません、むしろ忘れてしまっていたほどでした。 けれど、ふと、そう思ったのです。


朝から寒い1日でした…ましてや百貨店のある場所は若者の街で、人の波を超えて、ゆるい坂を登っていった先にありました。平日でも人の混雑とガチャガチャした音響が鳴り響き、わたしにとっては行かなくていいか…と思ってしまう理由がいくつもでてしまうほど。

しかし、わたしはささやかにも確かに受けた感覚〈心のスパーク〉を今大事に受けとめて、これをデモンストレーションしよう〜と思えたとき、行かなくてもいい理由がすべて脇に置かれたのでした。

フィナーレを見届けたいという大勢の人で賑わう百貨店。

店内は、数年で変わってしまったショップの数々。しかし、わたしは、とあるショップを見つけた瞬間‼︎  これを見たかった!ここに会いにきた!という懐かしさ、まるで久しぶりの再会のような清々しさを受けたあと、嬉しさのあまり涙が溢れました。義母が大好きだったお洋服のショップでした。

思わずディスプレイを写メにおさめました。


人だかりで百貨店の代表者のご挨拶も、シャッターが閉まる光景も、遠越しの様子でしか見えませんでしたが、この場に来て、ここにいる人たちと同じ思いで、55年の幕引きに対して拍手を手向けることができることが、なぜか嬉しかったのでした。


帰り道、親戚のグループLINEに、このディスプレイ写メをアップしました。義母の妹も、息子娘も、嫁も、孫も、この写メについて、やりとりが行き交いました。

わたし達皆の心の中で、義母が蘇ったのでした。